内申点って高校受験にどう影響するの?-神奈川県立高校入試との関係性

1.内申点とは?

1-1.内申点とは何か?

ご存知のように高校入試においては、通っている中学校の内申書が合格・不合格を決める重要な判定資料となります。内申書とは、学校の成績や学校生活などが記載された書類で、内申点とはその内申書に記入される成績点のことです。各学年で9教科に対し5段階の評定を行った数値で、調査書点や調査書素点ともいわれています。都道府県によっては中学3年間の成績が記載されるところもありますが、神奈川県の場合、中2と中3の内申点が入試に関係してきます。 内申点が低いということは、中2または中3の成績が良くなかったことに直接的な原因があります。内申点は各教科の成績が上がると自動的に上がっていくため、内申点が低い理由は、それまでの頑張りが不足していたということに他なりません。そういった事実を理解すると、内申点を上げることの重要性が理解できると思います。

1-2.内申点の算出方法

神奈川県では、中2と中3の9教科(主要5教科と実技4教科)の成績を5段階で評定して内申点を計算します。内申点のつけ方は、教科ごとに決められている細かな「観点」に沿って、絶対評価(他の生徒の成績を考慮に入れず、生徒本人の成績そのもので評価する方法)によって算出されます。ちなみに主な観点は,①知識・技能,②思考・判断・表現,③主体的に学習に取り組む態度 の3項目です。 それぞれの観点の評価方法は,「文部科学省 国立教育政策研究所」の先生向け資料が参考となります。 内申点は学年を通して計算すると合計45点が最高点となり、神奈川県では中3の成績のみ2倍になります。

こちらをクリック「文部科学省 国立教育政策研究所」の学習評価のあり方ハンドブック

2.内申点は高校受験にどのように影響するのか?

2-1.内申点は高校受験でなぜ必要なのか?

神奈川県立高校入試の場合、[内申点][5教科の学力検査][特色検査]の3つが選抜基準となります。特色検査は「筆記試験・実技試験」を行う学校もあれば、「面接」を行う学校もあります。 また、特色検査を行わない学校もあります。入試選抜に占める[内申点]と[学力検査]の比率は、高校によって2:8のところから8:2のところまで幅があります。また[特色検査]の占める比率は1~5まで幅があります。つまり、内申点が評価に影響を与えやすい高校とそうではない高校があるわけですが、このことは受験高校を選ぶ場合の重要なポイントとなります。 これは、内申点の低い子供が内申点を重視する高校を受験する場合、不合格になる可能性が高くなるということであり、また、内申点が低いことを理由に中学校側から志望校を変えるように指導されることも考えられます。受験できる高校の選択肢の幅が狭くなるということです。 また、私立高校の併願(滑り止め)校を選択する際にも、神奈川県では内申点が重要になります。重要というより、併願校の合否はほぼ100%内申で決まると言っていいでしょう。一部の学校(中大付属横浜など)を除いて、併願確約制度のある各私立高校では、あらかじめ今年度の入試で内申点をどれだけ取っておけば、合格を確約するかを決めております。一般には非公表となっておりますが(日大日吉などは公表しています)、各中学校の先生や、学習塾には知らされておりますので、中学校や学習塾ではその基準内申に基づいて併願校選択のアドバイスを行います。内申点が高ければ、当然選択できる併願校が多くなり、公立高校の受験でも上位校をチャレンジしやすくなります。 そういったことからも、高校受験では内申点を上げることが大切なのです。

※神奈川県立高校入試のしくみについて、詳しくは当ブログ「ここがポイント!神奈川県TOP校の高校入試対策!」を参照してください。

2-2.内申点を上げるためには?

では、どのようにすれば内申点を上げることができるのでしょうか? それには3つのポイントがあります。 ひとつ目のポイントは「授業態度」です。授業態度は、文字通り、授業に取り組む姿勢や振る舞い方のことです。先にあげた「観点」のうちで、「③主体的に学習に取り組む態度」の評価に大きくかかわってきます。立ち歩きや私語・居眠りはもちろん、忘れ物なども大きなマイナスとなります。自分では「キチンとできている」と思っていても、評価が下がることはよくあります。
この評価を上げるためにはまず、自分の行動を客観的に見つめ直す必要があります。自分の席が教室の後の方にあるからと油断してはいけません。教室の前で教壇の上に立つ先生からは一番後の席まで、生徒一人ひとりの様子がよく見えているものです。前の生徒の背中にうまく隠れていると思っても、何をしているか、先生にはお見通しです。授業中に、授業と関係ないことをしているようでは、内申点は上がりません。授業中は先生の話に耳を傾け、しっかりノートをとり、積極的に発言するなど、100%授業に集中することが大切です。 二つ目のポイントは「提出物」です。提出物には実に色々なものがありますが、こちらは「②思考・判断・表現」「③主体的に学習に取り組む態度」の評価に大きく関わってきます。定期テストで100点満点を取り、授業態度に何も問題がなかったのに、プリントを1枚提出し忘れていただけで、内申点に4を付けられたということもあるようです。期限内に提出することはあたり前。期限を過ぎてしまうと悪い意味で目立つため、ちょっとした提出物でも必ず期限を守るようにすることです。「聞いていなかった」「知らなかった」という言い訳は一切通じません。 さらにプリント類の紛失などは絶対にあってはいけませんし、配布された物はきちんと保管・管理することも重要です。ノートであれば、授業内容をしっかりと書き留めてあるかも評価されます。問題集であれば、答え合わせや解き直しをしてあるかも評価されます。提出物の評価を高めるためにも、そういったものは、取りかかりを早くすることが大切です。
三つ目のポイントは「定期テスト」です。内申点にとって重要である理由は、先の「観点」のうち、「①知識・理解」「②思考・判断・表現」に直結しているからです。もちろんテスト前だけの勉強では簡単に点は取れないため、日頃からコツコツと勉学に励み、来るべきテストに備えるようにしましょう。
※定期テストの成績を上げる方法について、詳しくは当ブログ「定期テストで点数を上げられる子ーその勉強法とは?」を参照してください。
さらに、普段の授業内に行う小テストも評価対象になります。仮に定期テストの得点が振るわなかった場合でも、小テストでコンスタントに高得点を重ねていれば、内申点を上げていく可能性につながります。逆にいえば、小テストで手抜きをしていると、内申点に響くこともあるということです。

内申点を上げるためには?

3.内申点が取れていれば高校受験は安泰か!?

3-1.内申点が取れていれば合格しやすいのか?

神奈川県立高校入試は2月中旬に行われる1回だけですが、その試験における受験生の[内申点][5教科の学力検査][特色検査]の持ち点を使用して,計算方法の異なる「第1次選考」と「第2次選考」の2段階で合否の選考が行われます。

第1次選考では、[内申点][5教科の学力検査][特色検査](実施される場合のみ)を判定基準に使い、まずは定員の90%の合格者を決定します。その後定員の残り10%の合格者を第2次選考で決定します。

第2次選考では「内申点」は、内申書内の「主体的に学習に取り組む態度(27点満点)」のみを使い、他に[5教科の学力検査][特色検査](実施される場合のみ)を判定に使用します。

2023年度入試までは「第2次選考」において内申点は一切入りませんでしたが、上記の通り2024年度入試より「主体的に学習に取り組む態度」を数値化した内申点が入ります。したがって、2023年度受験までと違い、内申点が低い受験生が学力検査と特色検査の結果のみで逆転合格ができるとは言いきれなくなるでしょう。

ただ、選考は「第1次選考」「第2次選考」ともに、内申点と学力検査、特色検査の得点を、学校ごとに決められた配点比率によって計算した総合成績で決められるため、内申点だけが良くても当日の学力検査の結果が悪ければ合格は難しくなります。

3-2.内申は大切です。しかし高校受験を考えた場合にもっと大事なことは?

内申点の他に、実は内申書に記入される別の要素があります。特別活動の記録・部活動の記録・行動の記録・総合所見というのがその項目で、学級・生徒会・学校行事・部活動等について文章で記入されるものです。 よく「部活動を熱心にしていれば内申書に反映されますか?」と聞かれることがありますが、これらの活動が内申点ほど合否に影響を与えるかというと、そうではないというのが実情です。特に神奈川県の場合、評定でわかる学力以外のことは面接や特色検査で確認するという方針のため、県立高校入試にはほとんど関係がないといってもよいくらいです。 そういった意味で、例えば部活動に関して「内申書に関係ないから、やらない」というのも、選択肢のひとつだと思います。ただ、以前にお伝えしたように、志望校を決める際には、偏差値や大学合格実績などの数字だけを見るのではなく、本人が「本当に行きたいかどうか?」という要素もとても大切です。 中学に入って関心を持ち、好きになった部活動が志望校にあるかどうか、その高校が力を入れているかどうかなど、それらの要素を選択肢の中に入れるということも大切です。部活動や生徒会活動に取り組む子供は、辛い練習や時間的な拘束があるなかで通常の学業をこなしていくわけですから、相応の忍耐力が養われます。 また、受験というのは、一人の人間を極限まで数値化し、実力によって合否を判定するという、ある意味ドライな部分があります。一方、内申書はそのなかでも唯一、本人のやる気や日々の積み重ねが評価される部分です。同時に、そういった基礎的なことの積み重ねこそが、学習を深めていく重要な要素にもなっているのです。 「内申書は一日にしてならず」と言ってもよいかもしれません。受験への取り組みは、その後の人生にも影響してきます。そういったことも含めて、高校受験に向き合うようにしてください。

内申は大切です。しかし高校受験を考えた場合にもっと大事なことは?