子供は語彙力を高めると学力が伸びる!?【小学4年生編】

【POINT1】語彙力とは?

全ての教科に影響する語彙力って何?

―― ことばの働きは不思議である。ことばは外の世界に名前を与えることで外の世界を範疇化し、外の世界を理解する(知る)。「石」の例でも述べたように、混沌とした感覚表象を交通整理し、一つの名前「イシ」にくくることで、数多くの具体的で、かつかたちが少しずつ違う石ころをすべて、一つの概念表象「石」に収斂させることができる。客観世界の多様なる表象に一つの秩序をもたらすことができる。――

 

上の文章は、ある年の栃木県公立高校入試問題の論説文第1段落です(原文は山鳥重著「ヒトはなぜことばを使えるか」より)。入試が始まり急に上のような文章が表われると、多くのお子さんは文章を目した途端、たちまち何を言っているのか分からなくなり、パニックを起こすことでしょう。その大きな要因は、語彙力がないためだと推察されます。「範疇化」「混沌」「表象」「収斂」「客観」「秩序」など、普段の日常会話では決して使わないような言葉がたくさん登場していますが、言葉の意味が分からないため、文章を読んでもその内容を理解することができません。文章内容をきちんと理解できなければ、当然問題を解くことは不可能です。

上の文章は極端な例かもしれませんが、国語の文章のみならず、算数・理科・社会などの問題に向き合う時だけでなく、教科書の内容をきちんと理解する上でも、語彙力はきわめて大切なのです。

【POINT2】語彙力はどのようにして身につけるのか?

語彙力は積み重ねで意識させることが大切です。

語彙力は、幼少期に親との会話や本を読んであげる(自分で読めるようになったら自分で読む)ことで身につき、向上していきます。この時期に大事なことは、親が一方的に教えるのではなく、お子さんが「どう思うのか?」を聞いてあげることです。そうすることで、自分が覚えている単語を一生懸命に使いながら、自分の意見を話してくれるからです。返答の仕方を考え、意味を考えて言葉にする――この行動が語彙力の向上にはとても良いことなのです。普段の会話のなかで、子供は親の投げかけに対して返答をする場合がありますが、この時はその話の流れに乗っているだけで、会話のなかの難しい単語や意味をあまり考えずに話している場合が多いものです。したがって、この場合は、聞いてあげる会話と違って語彙力は上がりません。

よく小さい子供が「これ何?」「それどういうこと?」と親に聞いてくることがあると思います。親からすると鬱陶しく感じることもあると思いますが、実はその時が一番語彙力は向上します。疑問に思う⇒意味を教えてもらう⇒実際に使ってみる。子供の拙い言葉を大人の言葉に変換してあげることで、言葉の意味を覚えながら、少しずつ表現力が上がっていくのです。

ここまでお読みいただいて、「もう子供は小学生だけど、語彙力が不足しているのかな」と不安に感じたご父兄様もいると思います。ご自身に置き換えて考えても、語彙力は大人になっても足りないと感じる場合もあると思います。語彙力は、ここまでやればOKというものではないため、少しでも多くの言葉を子供のうちに覚える必要がありますし、親が意識して年齢に関係なく継続して語彙力アップに取り組むことも必要だと思います。

お子さんの語彙力を確認するために、例えば普段の会話で大人の言葉で話をしてみて、お子さんがどれだけ会話ができているか確認してみるのも良いと思います。そしてもし「それどういう意味?」と聞かれた場合は、ていねいに教えてあげることで、ひとつずつ言葉を覚えていくことになるのです。

【POINT3】語彙力と勉強の関係性

語彙力を高めるコツは興味を持たせることです。

勉強と語彙力とはとても密接な関係にあります。質問の意味が理解できなければ、答えることができません。算数でも、計算問題ではなく文章問題などは語彙力の差が学力の差に影響してきます。理科や社会でも同じです。疑問に思ったことを調べたり聞いたりして解決していく習慣があると語彙力が上がり、読解力も向上して問題に答えられる数も増えていきます。ご両親では教えてあげられる限界があると思いますが、塾でしたら日々の学習のなかで語彙力を向上させることが可能になります。

黄学館では、語彙力向上を意識したカリキュラムがあります。[新小学問題集 中学入試編]を使い、通常の学習塾なら子供に読ませて問題を解かせるところを、黄学館では講師が文章を音読するなかで、子供が理解できない言葉をその都度、意味を説明するのです。そうすることで言葉や文章に興味を惹かせ、作者の考えまで理解させていきます。

語彙力は、どれだけの数の言葉を理解できているかです。当たり前のことですが、子供たちはその数が少ないため、語彙力がないという前提で指導していきます。そして中学生になった段階では、自分で調べさせ、前後の文脈で理解をさせるようにしています。そうすることで熟語構成を意識するようになりますので、見たことのない言葉でも意味が分かるようになるのです。

【POINT4】語彙力が向上すると?

語彙力の向上は勉強の効率性を高めます!

では、語彙力が向上すると勉強にどのように影響するのでしょうか?

まず、文章を読んだ時の第一印象が変わってきます。そして、知っている言葉が多いほど、文章が頭に入ってきます。理解度も高まるため、読み間違いや誤読をすることなく問題も解けるようになりますし、迅速に問題に答えることにもつながります。時間に余裕ができれば、見直す時間も生まれてきます。その結果、学力向上に結びついていくというわけです。語彙力は学習のベースであり、成果が変わるとても大事な要素なのです。

語彙力がある程度身についたことで成果が見えてくると、勉強に対するやる気も高まります。そして、その時に大切なことがもう一つあります。それは辞書を引く習慣をつけさせることです。小学4年生は、ちょうど漢和辞典の引き方を習う時期でもあります。3年生頃から引き方を教わる国語辞典と一緒に常に手元に置いておき、意味のわからない単語、知らない単語、読めない漢字はすぐに辞書で調べるというクセをつけることが大切です。辞書には、同意語や反意語、それに例文なども載っていますので、それらを読み、吸収することで語彙力の向上に役立ちます。

一方、語彙力が向上すれば、読書をする楽しさを知ることにつながります。特に名作といわれている小説などには、それまで見たことのない単語に加え、読めない漢字もたくさん登場します。本を読むことが好きになれば、それらを調べるために必然的に国語辞典や漢和辞典を引くようになります。「読書は国語力を高める」とよく言われますが、語彙力に加え、読解力も身につけることができます。さらに、文章を書くときには、文脈に合った言葉を選んで使えるようになるなど、読書は表現力の向上にも役立ちます。

【POINT5】語彙力がある大人になれば・・・

語彙力は、人生を豊かにしてくれる!?

最近は語彙力に関する本もたくさん出版されていますが、語彙力は大人になった時にとても重要です。例えば落語や漫才などを見て、大人は笑っているのに子供はつまらなそうにしていることがありますが、これは語彙力の差です。お笑いは、遠回しの表現をしたり言葉を他のものに例えたりしますので、語彙力があることで理解ができ、笑えるようになります。一方で、笑わせる方にも語彙力がなければ、話はつまらなくなり、笑えないものになってしまいます。お笑い芸人にも豊かな語彙力が求められるのです。

また、人との会話においても、語彙力がないと会話がつまらなかったり会話にならなかったりしますし、これが仕事中の会話となると、それこそ仕事ができない人だと評価されてしまいます。仕事ができる人は、色々な物ごとに対して見識があり、相手からどんな話をされても応えることができるものです。そして、そうすることで話が広がっていき、ビジネスチャンスを掴む機会が増えていきます。

もうひとつ例を挙げてみましょう。文芸書やビジネス書を読んでいて意味が分からない言葉が多いと、途中で眠くなり読む気がなくなってしまった、という経験をされたことがあると思います。意味が分からないと読む気がなくなる、ということには語彙力が関係しています。さらに、その時に辞書を引くか引かないかで、以降、その人の語彙力向上に関わってきます。語彙力は、大人になっても不断に向上させていくことが求められているのです。(最近はスマートフォンに語りかければ、辞書を引いたのと同じ情報が得られますので、ぜひ活用したいものです)

このように語彙力は、大人にとっても必要不可欠なものです。そして、その語彙力を身につけるためには、子供の頃からの積み重ねが大切になります。その語彙力が一番身につくのは、小学校から大学までの勉強に専念できる時期なのです。

黄学館では、学習のなかで特に語彙力の向上を重要視しています。今回の内容に興味を持たれたご父兄様がいましたらぜひ一度ご相談ください。